リールの注油のやり方|オイルとグリスの使い分け・注油箇所・頻度まで解説

リールを長く快適に使うために欠かせないのが、日常の注油です。 とはいえ「どこに」「何を」「どれくらい」差せばいいのかは、迷いやすいところです。
結論から言うと、洗って乾かしたあと、取扱説明書の指定箇所にオイルとグリスを少量差し、はみ出した分を拭き取るのが基本です。どこにどちらを差すかは、箇所と機種で決まっています。
日常の注油は、ボディを開けずに、見える範囲の必要箇所に差すだけで十分です。
この記事の要点
- 注油は洗って乾かしたあと。取扱説明書の指定箇所に、メーカー純正の油を差す
- オイルとグリスは箇所で使い分ける(シマノの例:スプール軸はオイル、ハンドルノブはグリス)
- ダイワのマグシールド部は注油しない。シマノの防水機構の機種も取扱説明書で確かめる
- 量は少なめに。はみ出した分は拭き取る(付けすぎは回転が重くなる原因)
リールの注油はなぜ必要?オイル切れで起きるトラブル
リールの注油が必要なのは、回転をなめらかに保ち、金属パーツの摩耗・サビ・巻き重りを防ぐためです。
リール内部では、金属パーツ同士が高速で接触しながら動いています。 油膜が切れると金属が直接こすれ合い、少しずつ摩耗が進みます。さらにパーツの隙間に残った水分が、サビを呼び込む原因にもなります。
具体的な症状としては、巻き出しの引っかかり、シャリシャリという異音、ベールの戻りが悪くなるといった変化が現れやすくなります。 「なんとなく巻きが重いな」と感じたときは、油膜切れのサインであることが少なくありません。
「水洗いだけしていれば9割は大丈夫では」と思う方もいるかもしれません。 ですが、洗浄と注油は役割が別です。水洗いは表面の塩や汚れを落とす作業、注油は失われた油膜を補う作業で、どちらか一方では不十分です。
洗浄と注油はセットで考える
水洗い・塩抜きで塩汚れを落としたあと、完全に乾燥させてから注油するのが正しい流れです(シマノ:日常メンテナンス)。洗浄と乾燥の詳しい手順は「リールの塩抜きのやり方」にまとめています。
リール注油に使うもの|オイルとグリスの違い・パーツクリーナー
注油に使う基本アイテムは、オイル・グリス・拭き取り用の布や綿棒です。汚れがひどいときだけ、パーツクリーナーを使います。
用意するもの
オイルはさらさらとした低粘度、グリスはとろみのある高粘度です。どこにどちらを使うかは、箇所やパーツによって決まっています。
シマノは、日常のメンテナンスには「リールオイルスプレー」と「リールグリススプレー」の2つがあればよいとしています。 オイルとグリスは、純正品を使うよう求めています(シマノ:日常メンテナンス)。
パーツクリーナーは、外側の金属部に付いた古い油や、ホコリの混じった油を拭き取るときに使います。 布や綿棒に少量含ませて拭うのが基本で、リールに直接吹き付けたり、内部へ吹き込んだりはしません。
パーツクリーナーを使うときの注意
- 換気の良い場所で使う・火気厳禁:スプレー缶は可燃性のガスを使ったものが多く、引火のおそれがあります。使うときは十分に換気し、ガスコンロなど火気のある場所の近くでは使わないでください(消費者庁:スプレー缶によるやけどや皮膚障害に注意)。
- 樹脂・ゴム・塗装面に使えるかは、缶の注意書きで確かめる:製品によって使える素材が違います。
- 異なる薬剤を混ぜて使わない:クリーナーとオイル・グリスは、それぞれ単独で使います。
- ダイワのマグシールド部には付けない:マグシールド部は注油も分解もしない部分です(ダイワ SLP:リールお手入れ)。
「呉工業の5-56を吹けば手っ取り早いのでは」と考える方もいるかもしれません。
ですが、5-56のような汎用の防錆潤滑剤を、潤滑目的でリールに吹き込むのはNGです。エアゾール系の防錆潤滑剤がボールベアリングなどに入り込むと、中に封入された油が溶けて流れ出てしまいます(ダイワ SLP)。
オイル vs グリス、結局どっちを使う?
もっとも迷いやすいのがオイルとグリスの使い分けですが、どちらを使うかは箇所とパーツで決まり、機種によって違います。 迷ったら取扱説明書の指定に従い、ドラグワッシャーには専用のドラググリスを使います。
| 比較項目 | オイル | グリス |
|---|---|---|
| 粘度 | 低い(さらさら) | 高い(とろみ) |
| シマノの例(22ステラ) | スプール軸の軸受部分・アームカム周りの見えているボルト | ハンドルノブの回転部・アームカムの可動部 |
| ダイワの例(スピニング) | リールガードオイルはメインシャフトには推奨しない | ラインローラー・ベール可動部にスプレーグリス。リールガードグリスはボールベアリング・メインシャフトには推奨しない |
| 塗布量 | 少量。スプレーは軽く1秒ほど(シマノ) | 少量。なじませて余分は拭き取る |
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シマノの例は、同社のスピニングリール「22ステラ」での手順です。同じ部分でも、メーカーと機種で使う油が違います(シマノ・ダイワ SLP・ダイワ 用途一覧)。
「全部オイルにすれば1本で済むのでは」と思うかもしれません。
ですが、推奨以外のオイル・グリスや指定外の箇所への注油による不具合・破損は、ダイワは保証できないとしています。
グリスを付けすぎると、回転が重くなる原因にもなります(シマノ:オーバーホールのススメ)。指定どおりの油を、指定どおりの量だけ差すことが、快適な巻き心地への近道です。
リールの注油箇所はどこ?スピニングの5ヶ所
スピニングリールで日常的に注油する箇所は、シマノの22ステラの例とダイワのラインローラーを合わせると、次の5ヶ所です。 オイルかグリスかは箇所で決まっていて、機種によって違うので、取扱説明書で確かめてください。
スプール軸
スプールを外し、軸受部分にオイルを軽く。ハンドルを回して軸を前後させ、なじませる
アームカム周りの見えているボルト
サビを防ぐ意味でオイルを差し、余分は拭き取る
ハンドルノブの回転部
グリスを入れ、ノブを回してなじませる
アームカム(ベールの付け根)の可動部
グリスを差し、ベールを開閉してなじませる
ラインローラー
機種で違う。ダイワはスプレーグリス。マグシールドタイプは注油厳禁
ラインローラーは糸との摩擦が集中し、塩ガミもしやすい要注意ポイントです。 洗うときは、ローラーを回しながら流します(シマノ)。乾いたら、取扱説明書の指定どおりに注油します(ダイワ SLP)。
「本体内部のギアにも自分で差したい」と感じるかもしれません。ですが、ボディ内部などを分解しての注油は、回転に支障をきたすおそれがあります。
ボディやローターの中への注油は、パーツの作動を妨げて性能を大きく落とすこともあります(ダイワ SLP:リールお手入れ)。日常ケアは外から届く指定箇所だけにとどめ、内部はオーバーホールに任せます。
ベイトリールの注油箇所
ベイトリールの場合は、注油箇所がやや異なります。 ダイワの用途一覧では、ベイトリールに使う箇所が次のように決まっています(ダイワ:用途一覧表)。
- リールガードオイル:スプールボールベアリングとスプールシャフトだけ(ベイトキャスティングモデルは専用オイル)
- リールガードグリス:ハンドルノブ・クラッチ・ウォームシャフトだけ
マグシールドボールベアリングそのものへの注油は、絶対にしないようダイワは注意しています(ダイワ SLP)。
ベイトの詳細は専用記事へ
ベイトリールはブレーキ機構やレベルワインダーなど構造が細かいため、注油箇所ごとのコツは「ベイトリールのお手入れ方法」でくわしく解説しています。
シマノ・ダイワで注油箇所は違う?純正オイル・グリスと注意点
注油箇所と使う油はメーカーと機種で違うので、使うオイル・グリスは取扱説明書と純正の用途の指定に従うのがもっとも安全です。
ダイワはオイル・グリス用途一覧表を公開しています。どのオイル・グリスをどの箇所に使わないかを確認できます(ダイワ:用途一覧表)。
シマノも公式のメンテナンスページで、洗浄と注油の基本手順を案内しています(シマノ公式:スピニングリールのメンテナンス)。
「他社のオイルやホームセンターのオイルでもいいのでは」と思うかもしれません。
ですが、シマノは純正品を使うよう求めています。ダイワも、推奨以外のオイル・グリスを使った場合の不具合や破損は保証できないとしています。迷ったら取扱説明書やメーカー公式の案内に従ってください。
注油してはいけない箇所|マグシールド・防水機構への注油はNG
注油は基本的にリールに良い作業ですが、やってはいけない箇所が存在します。 ダイワは、マグシールド・インフィニットストッパー部・水抜き穴に注油しないよう求めています。
注油してはいけない箇所
- ダイワのマグシールド部:オイルもグリスも差しません。注油や分解でシールド効果を損ない、不具合が起きることがあります(ダイワ SLP:リールお手入れ)。マグシールドボールベアリングそのものへの注油も、絶対にしないよう注意されています。
- ダイワのインフィニットストッパー部・水抜き穴:注油しません(ダイワ オイル・グリス用途一覧)。
- シマノのXプロテクト・コアプロテクトを備えた機種:注油とグリスアップの箇所は機種によって違うので、取扱説明書で確かめます。指定にない箇所には差しません(シマノ公式メンテナンス)。
- ボディやローターの中:分解しての注油は回転に支障をきたすおそれがあり、中への注油はパーツの作動を妨げます(ダイワ SLP:リールお手入れ)。
- 誤って注油してしまった場合は、自己判断で対処せず、販売店やメーカーサポートに相談するのが安心です。
整理すると、マグシールドはダイワ、Xプロテクト・コアプロテクトはシマノの防水技術です。名称を取り違えないようにしましょう。
「密閉されているなら、なおさら油で守ったほうがいいのでは」と考える方もいるかもしれません。 ですが、ダイワはマグシールド部への注油がシールド効果を損なうとしています。防水機構の部分には、取扱説明書で指定されていない限り油を差しません。
注油の量とやり方|つけすぎNG・少量が基本
注油の基本は、少量を差してなじませ、はみ出した分を拭き取ることです。 たっぷり差したくなりますが、量が多いほど良いというわけではありません。
手順自体はシンプルです。乾いたリールの指定箇所に少量を差し、なじませてから、はみ出しを拭き取ります。
洗って乾かす
塩と汚れを流水で落とし、屋内か日陰で完全に乾かす
指定箇所を確かめる
差す箇所と、オイルかグリスかを取扱説明書で確認する
少量を差す
スプレーは軽く1秒ほど。吹きすぎない(シマノ)
なじませる
ハンドルやノブを回す、ベールを開閉するなどして行き渡らせる
余分を拭き取る
はみ出した油はティッシュやキッチンペーパーで拭き取る
はみ出した油をそのままにすると、そこにホコリや砂が吸着します。 油と混じった砂は研磨剤のように働き、かえってゴリ感やシャリ感を招くことがあるため、余分な油は必ず拭き取ってください。
「たっぷり差したほうが長持ちするのでは」と思うかもしれません。 ですが実際は逆で、過剰な油は抵抗になって巻きを重くし、汚れも呼び込みます。
シマノも、自分で手入れして回転が重くなった原因の一つにグリスの付けすぎを挙げています(シマノ:オーバーホールのススメ)。少量を差して余分は拭き取るのが、もっとも効く差し方です。
リール注油の頻度の目安|どのくらいの間隔でやる?
注油は、洗って乾かしたあとに指定箇所へ差す、という流れで日常の手入れに組み込むのが基本です。 シマノは日常のメンテナンスを「洗浄→乾燥→注油&グリスアップ」の順で案内しています(シマノ:日常メンテナンス)。
海で使ったリールは使うたびに洗うので、乾いたあとの注油もその流れで行います。注油の頻度や量が分からないときは、自分で手入れせずに修理窓口(SLP)へ依頼するよう、ダイワは求めています(ダイワ:用途一覧表)。
ボディの中の注油はオーバーホールで
ボディの中の注油は、メーカーのオーバーホールで行います。シマノは一般的な釣行ペースなら1年に1度・頻繁に釣行するなら半年に1度、ダイワは年に1度をすすめています。分解整備の間隔については「スピニングリールのオーバーホール頻度」を参考にしてください。日常は、見える範囲の指定箇所への注油で十分です。
「面倒だからまとめてやりたい」と感じるかもしれませんが、油膜が切れた状態で使い続けると摩耗が進みます。 注油は数分で終わるので、洗って乾かしたらそのまま差す習慣をつけたほうが、結果的にリールは長持ちします。
釣行後5分ケア
- まず真水で塩を流し、水気を拭いて完全に乾かす
- 乾いたら取扱説明書の指定箇所に少量ずつ差す
- オイルかグリスかは箇所で決まる(シマノの例:スプール軸はオイル、ハンドルノブはグリス)
- はみ出した油は必ず拭き取る
まとめ
リールの注油は、洗って乾かしたあと、取扱説明書の指定箇所にオイルとグリスを少量差し、はみ出した分を拭き取るのが基本です。 オイルかグリスかは箇所で決まっていて、メーカーと機種によって違います。
そして何より、ダイワのマグシールド部には注油しないことが、故障を防ぐうえで欠かせません。シマノのXプロテクト・コアプロテクトを備えた機種も、取扱説明書の指定箇所だけに差します。
洗って乾かしたら差す、を習慣にすれば、巻き心地の良さを長く保てます。まずは手元のリールの取扱説明書で、注油箇所を確かめるところから始めてください。
よくある質問
注油はどれくらいの頻度でやればいいですか?
シマノは日常のメンテナンスを「洗浄→乾燥→注油」の流れで案内しています。海で使って洗ったら、乾いてから取扱説明書の指定箇所に差すのが基本です。ボディの中の注油はオーバーホールで行い、シマノは一般的な釣行ペースなら1年に1度・頻繁に釣行するなら半年に1度、ダイワは年に1度をすすめています。
呉工業の5-56やパーツクリーナーを吹きかけていいですか?
潤滑目的でリールに吹き込むのはやめておきます。ダイワは、エアゾール系の防錆潤滑剤がボールベアリングなどに入り込むと、中に封入された油が溶けて流れ出てしまうとしています。パーツクリーナーも、外側の金属部の古い油を布や綿棒で拭うときだけに使います。
オイルとグリスの使い分けは?
箇所とパーツで使い分け、機種によって違います。シマノの22ステラの例では、スプール軸と見えているボルトにオイル、ハンドルノブの回転部とアームカムの可動部にグリスです。ダイワはラインローラーとベール可動部にスプレーグリスを使います。ドラグワッシャーには専用のドラググリスを使います。
マグシールド搭載リールに注油していいですか?
ダイワのマグシールド部には、オイルもグリスも差しません。ラインローラーがマグシールドのタイプも注油厳禁です。シマノのXプロテクト・コアプロテクトを備えた機種は、注油してよい箇所を取扱説明書で確かめてください。
注油はつけすぎても大丈夫ですか?
逆効果です。余分な油分はホコリや砂を吸着します。シマノは、自分で手入れして回転が重くなった原因の一つにグリスの付けすぎを挙げています。スプレーは軽く1秒ほどにとどめ、はみ出した分は必ず拭き取ってください。