リールのグリスとオイルの違いと使い分け|粘度・塗る場所・使ってはいけない箇所まで解説

リールのお手入れを始めると、まず迷うのがオイルとグリスの違いです。 どちらも潤滑剤ですが、粘度も塗る場所も違います。
結論から言うと、さらさらのオイルと、とろみのあるグリスは、差す箇所が決まっています。 シマノの22ステラなら、スプール軸の軸受にオイル、ハンドルノブやベールの付け根の可動部にグリスを差します。
どちらを差すかは箇所と機種で決まっていて、片方で全部を済ませることはできません。 ボディの中のギアにもグリスが使われていますが、そこはメーカーのオーバーホールで整備する箇所です。
この記事の要点
- オイル=低粘度でさらさら/グリス=高粘度でとろみがある
- 自分で差すのは、取扱説明書が示す外から届く箇所だけ
- シマノ22ステラの例:スプール軸の軸受にオイル、ハンドルノブの回転部にグリス
- ギアはボディの中。分解はせず、メーカーのオーバーホールに任せる
- ダイワのマグシールド部には注油しない。ドラグワッシャーにはメーカー指定のグリスを使う
- 迷ったら自分のリールのメーカー純正品を選ぶ
リールのグリスとオイルの違いは?まず結論
いちばん大事な結論は、オイルとグリスは差す箇所が決まっていて、互いの代わりにはならないということです。
オイルは低粘度でさらさら、グリスは高粘度でとろみがあります。 シマノのスピニングリール(22ステラ)の日常メンテナンスでは、次のように使い分けます。
- オイル:スプール軸の軸受部分、アームカム(ベールの付け根)周りの見えているボルト
- グリス:ハンドルノブの回転部分、アームカムの可動部分
グリスはギアにも使われる潤滑剤で、シマノの推奨グリスの早見表にもギア用の品が載っています。 ただし、ギアはボディの中にあります。
ダイワはギア部などを分解しての手入れを止めています。 シマノも、無闇に分解すると元の巻き心地に戻らなくなることがあるとしています。
「オイル1本あれば全部いけるのでは?」と思う方もいるかもしれません。 ですが、シマノは日常の手入れでも、オイルとグリスを箇所やパーツによって使い分けています。
| 比較項目 | オイル | グリス |
|---|---|---|
| 粘度・質感 | 低粘度・さらさら | 高粘度・とろみがある |
| 自分で差す例(シマノ22ステラ) | スプール軸の軸受・見えているボルト | ハンドルノブの回転部・アームカムの可動部 |
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オイルとグリスの粘度・成分の違い(番手・硬さの見方)
オイルとグリスの違いは、成分の構成と粘度にあらわれます(番手=粘度の指標)。
オイルは基本的に流動性の高い油そのものです。 対してグリスは、ベースとなる基油に「増ちょう剤」と呼ばれる成分を加えて半固形状にしたものです。 油をその場にとどめる役割を持たせていて、とろみがあるのはこの増ちょう剤のおかげです。
番手(粘度の指標)は、数字が小さいほどさらさらで流れやすくなります。 大きいほど硬く保持力が高い代わりに、抵抗が増えると考えるとイメージしやすくなります。
同じメーカーの中でも、オイルの粘度は製品ごとに違います。 ダイワは自社のオイル・グリスを、粘度の高い順に次のように並べています。
- リールガード グリス
- リールオイルII
- リールガード オイル
- REVボールベアリング用オイル
- スーパーフィネスルーブII
REVボールベアリング用オイルとスーパーフィネスルーブIIは、ベイトリールのスプールボールベアリング専用です。
ひとことメモ
番手や粘度は製品ごとに幅があり、同じ「オイル」でも用途別に何種類も出ています。初心者のうちは番手を細かく気にするより、自分のリールのメーカーが指定する純正品をそのまま使うのが失敗の少ない選び方です。
「番手まで気にしたくない」と感じるかもしれません。 日常の手入れなら、シマノは「リールオイルスプレー」と「リールグリススプレー」の2つがあればよいとしています。
どこに塗る?オイルとグリスの使い分けの基本
塗る場所の基本は、取扱説明書が示す外から届く箇所に、指定どおりオイルかグリスを差すことです。 シマノも、日常の手入れは見える範囲内の必要箇所にオイルとグリスを差すだけで十分としています。
スピニングリールでの例は次のとおりです。
オイルを差す箇所の例
- スプール軸の軸受部分
- アームカム(ベールの付け根)周りの見えているボルト
シマノ22ステラの例
グリスを差す箇所の例
- ハンドルノブの回転部分
- アームカムの可動部分
- ラインローラー(ダイワ。マグシールドタイプは注油厳禁)
シマノ22ステラ・ダイワSLPの例
差す箇所と品は、メーカーで違います。 たとえばダイワは、リールガード オイルをスピニングリールのメインシャフトには推奨していません。
ベイトリールでは、次の箇所が例です。
- オイル:ハンドル脇の注油穴の奥にある、スプール軸を受けるベアリング(シマノの例)
- グリス:ハンドルノブ、クラッチレバーと本体の接触部、ウォームシャフト(ダイワの例)
ギアのグリスは自分で分解して塗らず、メーカーのオーバーホールで塗り直してもらいます。
「もっと細かく、どこに何をどれだけ差すのか知りたい」という方もいるはずです。 注油箇所ごとの手順や量は、リールの注油のやり方にまとめています。
オイルとグリスの使い分け早見表【比較】
オイルとグリスは、粘度も差す箇所も分かれています。
| 比較項目 | オイル | グリス |
|---|---|---|
| 粘度・質感 | 低粘度・さらさら | 高粘度・とろみがある |
| 自分で差す例(スピニング) | スプール軸の軸受・見えているボルト(シマノ) | ハンドルノブの回転部・アームカムの可動部(シマノ)・ラインローラー(ダイワ) |
| 自分で差す例(ベイト) | スプール軸を受けるベアリング(シマノ) | ハンドルノブ・クラッチ・ウォームシャフト(ダイワ) |
| ギア(ボディの中) | 自分では差さない | ギア用のグリスがあるが、塗り直しはメーカーのオーバーホールで |
| 量の目安(シマノ) | スプレーは軽く1秒ほど。余分は拭き取る | なじませて余分は拭き取る。付けすぎると回転が重くなることがある |
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どちらか一方が優れているわけではなく、箇所ごとに指定された方を差すのが正解です。 日常の手入れには、オイルとグリスを1本ずつ用意します。
はみ出した油は拭き取ります。 油がハンドルノブに付いたまま長く置くと、ノブが膨らむ場合があります(シマノ25アンタレスの取扱説明書)。
代用できる?やってはいけないNG例
結論として、取扱説明書が推奨するオイル・グリスを、指定の箇所に使うのが基本です。 手近なもので代用しようとすると、かえってリールを傷めることがあります。
代表的なNG例を挙げます。
- 呉工業の5-56など、エアゾール系の防錆潤滑剤を可動部へ吹き付ける。ボールベアリングなどに入り込むと、中に封入された油脂を溶かして流してしまう
- グリスを塗った箇所に、5-56を多く吹く(グリスがゆるんで流れ出るおそれがある)
- 5-56を樹脂やゴムの部品に付ける(呉工業は、劣化や変色のおそれから金属以外には使わないよう案内している)
- ボディやローターの中にグリスを入れる(パーツの作動を妨げ、回転やストッパーの不具合につながる)
- ドラグワッシャーに、メーカー指定以外のグリスを塗る(ダイワは専用のドラググリスを指定)
- 成分の異なるオイル・グリスをよく拭き取らずに混ぜて使う
安全の注意(必ず読んでください)
- 5-56・パーツクリーナー・釣り用のオイルやグリスのスプレーは、火気の近くで使わないでください。
- スプレー缶の噴射ガスの多くは可燃性ガスです。火気のある場所の近くで使うと、ガスに引火して急激に燃え広がるおそれがあります。
- 使用中と使用後は出入り口を開けるなどして十分に換気してください(NITE:スプレー缶で思わぬ事故が発生しています)。
- 5-56は、潤滑のつもりでリールの可動部へ吹きかけないでください(呉工業 5-56のよくあるご質問)。
- 成分の異なるオイル・グリスを混ぜて使うのも避けてください。
「コスパを考えると汎用品で十分では?」と思うかもしれません。 たしかに潤滑自体はできます。 ですがダイワは、推奨以外のオイル・グリスを使った場合の不具合・破損は保証しないとしています。
特にドラグワッシャーには指定のグリスだけを使い、ダイワのマグシールド部には何も差しません。
使ってはいけない箇所【重要】
リールには、オイルもグリスも差してはいけない箇所があります。
代表的なのが、ダイワのマグシールド部です。 ダイワは、マグシールド部とインフィニットストッパー部、水抜き穴には注油しないよう求めています。
マグシールド部に注油・分解すると、シールド効果を損ない不具合が生じる場合があります。 ラインローラーがマグシールドのタイプも、注油厳禁です。
シマノは、撥水加工済みのパーツには撥水性が損なわれるため、油分を塗らないなどの例外があるとしています。
シマノのXプロテクトは、撥水処理とラビリンス(迷路状)構造で水の侵入を防ぐ防水機構です。 ラインローラーやローラークラッチにも使われています。 Xプロテクト・コアプロテクトを備えた機種も、注油してよい箇所を取扱説明書で確かめます。
シマノは、ローラークラッチ部に仕様以外のオイル・グリスを絶対に使わないよう注意しています。
安全の注意(必ず読んでください)
- ダイワのマグシールド部・インフィニットストッパー部・水抜き穴には、オイルもグリスも差さないでください。
- シマノのXプロテクト・コアプロテクトを備えた機種は、取扱説明書が指定する箇所にだけ差してください。撥水加工済みのパーツには油分を塗りません(シマノ 使用箇所別 推奨グリス・オイル早見表)。
- ギアなどボディの中のグリスアップは、自分で分解せずメーカーのオーバーホールに出します。
- 自分で分解すると、メーカー保証の対象外になる場合があります(ダイワ オイル・グリス用途一覧表)。
もうひとつがドラグです。 ダイワは、ドラグワッシャーには必ず専用のドラググリスを使うよう求めています。 シマノも、25アンタレスの取扱説明書でドラグ部にはオイルを差さないよう注意しています。
「境目がわかりにくい」と感じる方は、まず取扱説明書で防水機構の有無を確認するのが確実です。
ダイワは、使うオイル・グリスや注油箇所が分からない場合は、自分で手入れしないよう求めています。 その場合は、SLP(ダイワのアフターサービス)に依頼します。 ドラグの手入れや塗り直しの具体的な方法は、リールのドラグの手入れ方法にまとめています。
純正と汎用(メーカー別)はどう違う?選び方
選び方の基本は、自分のリールのメーカーの純正品です。
シマノはオイルとグリスに純正品を使うよう求めています。 ダイワは、推奨以外のオイル・グリスによる不具合・破損は保証しないとしています。
シマノは、使用箇所ごとの推奨グリス・オイルを早見表で公開しています(シマノ 使用箇所別 推奨グリス・オイル早見表)。
表にはギアなどボディの中の箇所も載っていますが、そこはオーバーホールで整備する箇所です。 自分で差す箇所は、取扱説明書で確かめます。
ダイワは、製品ごとに推奨できない箇所を一覧にしています(ダイワ オイル・グリス用途一覧表)。 たとえばリールガード グリスは、ベイトリールではハンドルノブ・クラッチ・ウォームシャフト以外には推奨していません。
シマノのリールなら、日常の手入れは次の2本です。 ダイワのリールなら、取扱説明書が推奨するダイワの品(リールガード オイル・リールガード グリスなど)を選びます。
どれくらいで塗り直す?頻度の考え方(概要)
日常の注油は、釣行後に洗ってリールが完全に乾いてから差します。 ボディの中のギアのグリスは、メーカーのオーバーホールで塗り直します。
オーバーホールでは、メーカーがリールを分解・洗浄し、グリスアップを行います。 シマノがすすめるオーバーホールは、一般的な釣行ペースなら1年に一度です。 頻繁に釣行するなら、半年に一度程度です。 ダイワは、年に一度のオーバーホールをすすめています。
ひとことメモ
温水で洗うとグリスが流れてしまうおそれがあるので、洗うのは水道水です。海水に水没させてしまったときは、オーバーホールに出すほうが安心です。ふだんは巻き心地の変化(重さ・ゴリ感・異音)を目安に、いつもと違うと感じたら点検を検討しましょう。
「結局、何釣行に1回やればいいの?」という具体的な目安が知りたい方も多いはずです。 注油の頻度と手順は、リールの注油のやり方で掘り下げています。 オーバーホールの頻度は、スピニングリールのオーバーホール頻度にまとめています。
釣行後5分ケア
- ドラグを締めて、水道水で塩を流す(温水は使わない)
- 水気を拭き、日陰で完全に乾かす
- 乾いたら、取扱説明書の指定箇所にオイルとグリスを少量差す
- はみ出した油は必ず拭き取る
まとめ|オイルとグリスは適材適所で使い分けを
- オイルは低粘度でさらさら、グリスは高粘度でとろみがある別物
- 自分で差すのは、取扱説明書が示す外から届く箇所だけ
- シマノ22ステラなら、スプール軸の軸受にオイル、ハンドルノブやベールの可動部にグリス
- ギアのグリスは自分で分解せず、メーカーのオーバーホールに任せる
- ダイワのマグシールド部には注油しない。ドラグワッシャーにはメーカー指定のグリス
- 迷ったら自分のリールのメーカー純正品
差す手順はリールの注油のやり方、ドラグまわりはリールのドラグの手入れ方法にまとめています。
よくある質問
リール用のオイルとグリスの違いは何ですか?
オイルはさらさらとした低粘度、グリスはとろみのある高粘度の潤滑剤です。シマノの22ステラの例では、スプール軸の軸受部分にオイル、ハンドルノブの回転部分とアームカムの可動部分にグリスを使います。どこにどちらを使うかは機種で違うので、取扱説明書で確かめてください。
オイルかグリスのどちらか一方だけでは足りませんか?
足りません。シマノは日常の手入れに「リールオイルスプレー」と「リールグリススプレー」の2つを使い、箇所やパーツで使い分けています。ダイワも、取扱説明書が推奨する以外のオイル・グリスを使った場合の不具合・破損は保証しないとしています。
呉工業の5-56で代用できますか?
潤滑目的での代用は避けてください。ダイワは、エアゾール系の防錆潤滑剤がボールベアリングなどに入り込むと、中に封入された油脂を溶かして流してしまうとしています。ストッパー部に入り込むと作動しなくなる場合もあります。呉工業も、グリスを塗った所に5-56を多く吹くと、グリスがゆるんで流れ出るおそれがあるとしています。余分な油は、ティッシュやキッチンペーパーで拭き取ります。
塗ってはいけない場所はありますか?
ダイワのマグシールド部とインフィニットストッパー部、水抜き穴には、オイルもグリスも差しません。シマノは、撥水加工済みのパーツには油分を塗らないなどの例外があるとしています。Xプロテクト・コアプロテクトを備えた機種は、注油してよい箇所を取扱説明書で確かめてください。ドラグワッシャーには、メーカー指定のグリスを使います(ダイワは専用のドラググリス)。
純正じゃないとダメですか?
自分のリールのメーカー純正品を選んでください。シマノはオイルとグリスに純正品を使うよう求めています。ダイワは、推奨以外のオイル・グリスを使った場合の不具合・破損は保証しないとしています。
どれくらいで塗り直せばいいですか?
日常の注油は、洗ってリールが完全に乾いてから取扱説明書の指定箇所に差します。ボディの中のギアのグリスは、メーカーのオーバーホールで塗り直します。シマノは一般的な釣行ペースなら1年に一度・頻繁なら半年に一度、ダイワは年に一度のオーバーホールをすすめています。